イギリスの老舗トラベルエージェンシーHoseasonsによるLGBTマーケティング戦略の成功の記録です。
昨今、日本でもLGBT向けのサービスを指向する企業が出てきていますが、なかなか上手く行っているところは多くはないのではないでしょうか。
その理由の一つとして、上辺だけLGBTフレンドリーであることを取り繕っているものの、やはりお金儲け目当てであることがミエミエであることが挙げられると思います。
もちろん、企業は利益を追求するのが第一の存在意義であるため、多少は仕方がないことかもしれません。
ただし、このHoseasonsの成長戦略にもあるように、ただ顧客を確保することを目的としたLGBTインクルージョン戦略から、地域社会、ひいては世界がダイバーシティに寛容になることまで目指した上でのLGBTマーケティング戦略であることが、本当の意味で顧客を獲得することにつながるのではないでしょうか。
今後、日本企業のLGBTマーケティング戦略の一助になるといいですね。
以下、超訳となります。
(CEO Anthony Railly)
LGBTIのために立ち上がった日は、個人的に、また職業場でも最高の瞬間だ。そして我々のビジネスに’おいて大きな変化をもたらした日でもある。
Hoseasonsは、買い物の中でも、最もエモーショナルなものの1つ、「休暇」を販売している。だから、利用者が歓迎されているって感じることが非常に大事で、私たちは利用者がパーフェクトって感じられるものを見つける手助けをしている。
私たちはこの素晴らしいことを70年間続けている。しかし時代は変わり、新しい可能性を開くために、ダイバーシティ(*1)とインクルージョン(*2)の旅の一歩を踏み出した。
(*1)多様性。人種、国籍、職能、性的指向、性自認など様々な人材を積極的に活用しようとする考え方。
(*2)包含。多様、特異な能力や性質を除外しないで、受け入れていこうとする考え方。
70年の老舗ブランドをアップデート
2014年に、この旅は信頼でき、成功しそうな家族向けに始まった。当時、我々のブランドは少し古すぎた。
僕たちは、ホットタブ(浴槽)のビジネスに優れていて、70%の売り上げがロッジ宿泊から上がっていた。ただ、別の新しいマーケットに入り込むことができないでいた。
それで、僕たちは考えた、全ての利害関係者~顧客、取引先、パートナー、従業員~が誇りを持てるHoseasonsってなんだろう?って。
自分たちの価値感も維持したいけど、今日における「価値」とは何を意味するだろうって。新しく、成長しているマーケットにアプローチして、長期に及ぶ成長を維持したかった。
僕らのビジョンは『a better place to stay (より良い滞在先)』を創造すること。人種やセクシャリティに関わらず、ゲストを歓迎する旅行だ。僕らがチームとして共有している価値観を尊重するブランドであり、同じ価値観を持つゲストやパートナーにアプローチすること。
イメージを変える。
セールスとマーケティングに携わる者として、私は全てのマーケティング戦略を見直した。ウェブサイト、Eメール、コンテンツに広告、採用しているモデルにも及んだ。
結果わかったことは、ほとんどのコンテンツは、「ストレートの白人で平均2.4人の子供を育てている」ものだということ。これは現在のイギリスの状況を反映していないし、僕らの願望や価値観を反映していなかった。
僕らはもっと良いことをしなければならなかった。
初めの年、僕らは全てのフォトグラフとモデルを見直した。新しい素材には、より多くのグループを、カップルを、そしても最も重要なことだけど、多様性を、含めた。
新しいイメージはHoseasonの’顔’を変え、それにつらなす全てのトーンを決めていった。次に、僕らはブロガーたちにコンタクトしはじめた。ラグジュアリーな宿泊施設を経験してみるリアルな人々が必要だったから。そして、LGBTIのゲストにも開放した。その結果が例えば、次のビデオだ。
パートナーシップを結ぶ
僕らは一人で全てはできない。そこで、Gay Star Newsがメディアパートナーとなり、広告、編集、ソーシャル、ビデオ、コンペなど実施した。
僕らは共同で素晴らしいコンテンツを制作し、LGBTIにどのようにかかわっていくべきかについて学んでいった。Gay Star Newsは柔軟だったので、僕らは常に新しいアイデアを試し、学ぶことができた。今、僕らはより適切な自社HPを運営している。Gay Star NewsからHoseasonsを訪れた人は、LGBTIのページに行きくことができ、便利なコンテンツと適切なイメージに触れることができる。
また、僕らは Norwich Price (LGBTパレード)を支援していて、自分たちのホームタウンでの特別な日に、僕らのチームが参加でき、本当に正しいことをしていると感じている。
マーケット戦略の中心に据える
全ての顧客が僕らのマーケティングについて「多様性がある」と感じて欲しい。LGBTIであろうとなかろうと。
僕らの雑誌広告、パンフレット、Eメール、ウェブサイトの中で、ダイバーシティ(多様性)を見て取ることができる。
顧客は僕らの新しいキャンペーンを受け入れてくれている。僕らのブランドに対する見方を変えてくれている。若く、進歩的な顧客は僕らをより現代的だと見ている。
成長
Hoseasonsは、成長を記録し、会社の歴史の中で初めてカップル顧客と、グループ旅行が家族旅行を上回った。
18歳~34歳のHP訪問者は22%増加した。そして、この新しいカスタマーは予約してくれる。僕らの『オートグラフ ラグジャリー ロッジ リゾート』は、過去12ヶ月の間で、LGBTIカップルの予約が急増した。
この全てが、ダイバーシティを重視したおかげとは言えないけど、ダイバーシティが長期的な成長をもたらすということは確信している。
そして、僕らの戦略は、社会的な評価を得ている。Hoseasonsは2017年度におけるTTG・LGBTフレンドリーな旅行会社賞を受賞した。このことは僕らにさらに進むよう奮い立たせてくれた。
Hoseasonsの同僚
僕らの同僚は、自分たちのやっていることに対して、ワクワクし、突き動かされている。
職場で、「自分自身」になることができるし、より生産的で、積極的になる。
ダイバーシティは、Hoseasonsのユニークな文化を表現する新しい方法を与えてくれた。人、特に会社の価値観に敏感なミレニアムの採用の助けにもなっている。
Hoseasonsは従業員の定着率が高く、10年以上の社歴の社員が25% を超えている。僕らのインクルージョン戦略は従業員がHoseasonsでのキャリアを通じて、受け入れられているという自信を与えている。
ビジネスとの統合
ダイバーシティとインクルージョンは単なるマーケティングを超え、僕らのビジネスの核心となっている。僕らは、従業員が皆んな真剣に取り組むよう、開かれた対話の機会を設けている。
D&I会議(Diversity & Inclusion Council)を設け、ニュース、活動、イベントの情報を定期的にアップデートし、Norwichプライドの際には、先頭に立って参加した。
地域社会においては、ビジネスを超えて非常に積極的だ。保守的なことでよく知られた地域だとしても。
僕らは、地域のイベントや、商工会でダイバーシティについて語り、若者がスキルを身につけ、職を得るサポートをしている。
失敗を恐れるな
マーケティングに携わる者には、失敗や逆戻りを極度に恐れる人がいる。僕はそのことを心配するし、他の仲間もそういう。間違いを起こしたっていいんだ。僕らだってそうしてきた。でも、僕らの観客は、間違いを起こしたって、受け入れてきてくれた。
ビジネスリーダーは、マーケティングに関してプレッシャーをかけるのをやめ、実験的でイノベーティブなことを行うことを認めるべきだ。
仕事の成果を家に持ち帰ろう
職場では実証できたので、僕はこの「旅」を子供たちと共有し始めた。子供たちも「その世界」で育っててほしいから。
子供達には僕が常に応援しているということを知ってほしい。自分に自信を持ち、「本当の自分」になる勇気を持ってほしい。そのとき僕は、一切意見しないと知ってほしい。
辿ってきた「旅」のおかげで、僕は「よりよい経営者」になり、「よりよい人間」になったと思う。
ダイバーシティとインクルージョンは、英国におけるさらなる挑戦について、僕の目を開かせた。まだまだ女性は職場で困難に直面し、ジェンダーの差はメンタルヘルス、人種差別、同性愛嫌悪の汚辱につながっている。
支援者になる
ビジネスオーナーは単にダイバーシティとインクルージョンを気にかけるだけではダメだ。積極的な伝道師にならなければならない。個人的な価値観、会社の価値観、そして職場における会社文化を支援しなければならない。
毎年150万人の顧客と、その次の世代に影響を与えるのは、Hoseasonsの国民的ブランドとしての義務だ。
僕の夢は、全ての人にとって、より力強い旅行産業を創出することだ。そして、僕の経験を他のマーケティングチームに共有し、僕らの「旅」に加わるための手助けとなること望んでいる。
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